土と暮らす vol.1 平山農園
2026.04.05
荒川です。
昨年から、私たちの食を支えてくれている人たちの元へ足を運び、実際に畑を見ながら聴いたお話をコラムにしています。
「つくる人」と「たべる人」の顔が見える関係ができることで生まれる安心感や感謝の気持ち、何よりつくる人の思いを知っていただく食材の美味しさは格別。
農業とは、有機とは、を知るきっかけに。
たくさんの食材の中から、何を選ぶのか。
拙い文章ですが、お読みいただけましたら幸いです。
vol.1は我らが平山農園です!

2025.5.14
上天草市大矢野町
「平山農園」平山明広さん
お昼休みにご自宅へ伺うと、小屋の方から何やらおしゃれなBGMが。
先日こちらで、春分の日によもぎ餅を作ろうの会を開催された際、釜戸でもち米を蒸したり、奥に昔のおばあちゃんちのような台所があって懐かしい気持ちになった。
音楽を流しながら作業日誌をつけておられた平山さん。
「作業日誌はいいですよ~。」現在34冊目。これまで、日々の農作業、その日の出来事を書き留めてこられたそう。このノートを見返せば、忘れてもすぐに確認できるし、先の作業計画も立てやすいという。

ご自宅の方も案内いただくと、定期的にマクロビレッスンを開催されるというかわいいキッチン付きのお部屋や、平山農園ルームシアターもあり、いつでもゲストをお迎えできるように、とてもきれいに整えられてあった。
音楽を聴きながら事務作業、飲み物を片手にPCでいろんなオンライン会議にも参加できるし、猫たちも寛ぎにやってくる。イベントやご友人との飲み会を開催されたりと、たくさんの人が集まり交わるこの場所では、ゆっくりと時間が流れていくように感じた。
代々、農家を営む平山家の長男として誕生した平山さん。お父さまは元々、酪農業と花卉栽培をしていた。この辺りは、昔から酪農家が多く、花卉農家も盛んな町である。
高校受験の時、農業を継ぐつもりはなかったが、なんとなく県内の農業高校へ進路希望。(お母さま曰くお父さまは大喜びしていたとか。)
高校卒業後、研修を経てから補助金制度を使ってハウスを建て、きゅうり栽培を始めた。その頃は米とレタスを作っていたご両親を手伝いながら、きゅうり栽培は一人で挑戦。うまくいかない時は、近くの農家の先輩たちがいつも助けてくれたという。
平山さんが自然栽培をはじめるきっかけとして印象に残っているのは、有機栽培のいちごをもらった時のこと。農業者が集まる会議で、ある農家さんから食べてみらんね~と受け取って帰宅するまでの間、車内がいちごの香りでいっぱい。我慢できずに一粒食べたときの感動が忘れられないと言う。
お母さまが農薬散布の作業のあとにいつも手荒れしていた姿や、農薬散布のあとの酒は控えた方がいい(体調不良になりやすい)という先輩からのアドバイス等、少なからず農薬の悪影響を感じていた。
ずっと昔から有機農業を貫いてきた先輩が身近にいたり、ラクトバチルス(いわゆる乳酸菌)について深く学んでいくうちに、自然と有機農業の道へ進み始めたという。化成肥料から有機肥料に、堆肥作りも自分で試行錯誤しながら、きゅうりと玉ねぎを栽培。お父さまの反対とお母さまの介護という環境的にも辛い時代だったと振り返る。
でも、時間が経つにつれて周りが気にならなくなり、言い合いやケンカもしなくなったという。相手には相手の事情があるし考え方も違う、それでいい。自然界で微生物や虫、いろんな生き物たちと共存しながら育っていく野菜のように、平山さん自身のあり方も変わったのだ。

平山農園と言えば、平山さんの似顔絵に無農薬・無化学肥料栽培のシールが付いたベビーリーフ。
2010年~2023年、生活クラブ(生活協同組合)向けにベビーリーフを栽培。24時間の細やかな管理、時間のかかる選別作業にもコツコツ取り組んだ。当時は近所の道の駅の野菜売り場にも少しだけ出荷されていて、初めて見つけたときは身近で有機栽培の農家さんがいるんだ!と感動したのを覚えている。
現在は、自然栽培、有機農業を身近なところから広めていきたいという思いから、貸し農園(体験農園)のような形で、毎年会員を募り、指導しながら自分も一緒に農作業を楽しんでいる。みんなで育てる区画でできた野菜は山分け、個人の区画はそれぞれに管理を任せて絶対に手を出さずに見守っておられるそう。自分では理解していても人に教えるのはまた違う難しさがあり、会員の皆さんと一緒に学び、新しく得る知識や経験もあると言う。
また、「上天草市の食と健康を考える会」の会長として、会長自ら近隣の保育園や小学校に出向き、菌ちゃん畑の土づくりから野菜栽培体験、無農薬米(みどり米)の田植え体験等を通して、子供たちに微生物(菌ちゃん)のことや自分たちで作る楽しさ・美味しさを伝えている。子供たちと同じように、畑の野菜や虫たちにも優しく話しかける平山さんの姿が印象的だった。
農作業の合間には、愛用の自転車でサイクリングをしたり、自分の足でいろんな場所を訪れて情報収集、いつも学ぶ姿勢を忘れない平山さんはみんなに慕われるお師匠さんのような存在。
平山さん自身の畑に案内していただくと、昨年11月に種を蒔いたという小麦や、花がチラホラ咲き始めたじゃがいも、種が大きく実っている湯島大根等の活き活きとした姿が。



ハウス内の苗床には、田植えを待つみどり米(無農薬のもち米)や夏野菜、ハーブ等、たくさんの種類の苗が並んでいた。


健康でいるために、病気にならない身体づくり。そのために、安心して食べられるものを。平山さんとの農作業体験から子どもたちが食に興味を持ってくれて、少しでも記憶の片隅に残ってくれていたら。大人になった時に、食のありがたさを感じ、自分にとって本当に大切なものを取捨選択できるようになるかもしれない。そんな未来が待ち遠しい。
あとがき
マクロビを少し学んでいたときに「身土不二」という言葉を知ってから農家に嫁いできて、この言葉の意味を身に染みて感じる。
近所のこのおばさんの愛らしいトマト、あのおじさんが袋いっぱいに持ってきてくれる白オクラ、柑橘農家の先輩がコンテナにぎっしり詰めて届けてくれるパール柑、他にも書ききれないくらいたくさん。よく顔を合わせる人がつくっているという安心感が美味しさも増してくれる気がしている。
運転席から眺める畑や田んぼの景色、道の駅に並びはじめる農作物から一年を通して季節の流れを感じられる。なんというか季節と自然とともに生きているような。それが私にとっては贅沢な感覚で、とても幸せに感じる。
